第三者


 第三者
 
 いじめる生徒といじめられる生徒がいる。ボクはそのどちらでもなく、同じ教室でそれを眺める。『見て見ないフリ』をする生徒だった。大人や先生は見て見ないフリをするのも罪だと言うが、一緒になって虐めないのだから、悪くないだろうと考える。第一、世の中、見て見ないフリの連続ではないか。その中の中心人物たちに何を言われたって、素直に言うことを聞くほど幼くはない。それに、下手に手を出せばこちらに刃を向けられる。友人でも何でもない、『ただのクラスメイト』の為に、どうして手を貸せというのだろう。先生は『クラスメイト』が困っていたら助け合うものだと言うが、ボクにとって『クラスメイト』は『ただのクラスメイト』であり、『仲間』だとは思えない。いじめをする人を仲間だとは思えないし、クラスメイトが先生の言う通りであるなら、対等でいじめなんてないだろう。そう考えると、やはりクラスメイトはただのクラスメイトに過ぎない。同じ空間で授業を受ける、一つの集団の纏まりだ。
 いじめを止めるために、誰かが先生に密告すれば一時的にそれはなくなるかもしれない。けれど、密告した本人は犯人に探しだされ、責められる危険をはらんでいる。密告すれば、『告げ口』で周りの生徒にも避けられる可能性も考えられる。こいつは、自分で解決せず、すぐに先生に頼る。頼るということは、ちょっとでも悪いことをすればこいつは先生に言われる。先生に尻尾をふる犬だ。そうとられれば、もうその者は最悪の事態になることは確実と思われる。
 そう考えると、傍観者がいい。たまたま、ボクはいじめのあるクラスに来てしまった、ただ、それだけだ。こっちもある意味被害者なのに、加害者扱いされるなんて冗談ではない。
 それなのに、あるとき、いじめる側が何を勘違いしたのか、傍観者たちを無理やり仲間に引きずりこみにやってきた。
 「あいつ、今度から無視しろよ」
 ああ、傲慢なことだ。頼みではなく、傍観者のボクに命令をしたのだ。
 あんまり呆れ腹立ったものだから、薄く笑ってそいつに言った。
 「お前、何様?」
 「・・・は?」
 茫然とした顔。それを見ると、クツクツ笑いが出てしまう。
 「お前なんかに命令される言われはないね。ボクは、第三者。お前たちのどちらとも関わらない」
 「何だとっ」
 「煩わしいんだよ。小蠅みたいに集まって、毎日毎日鬱陶しい。無視したければ、勝手に自分たちの内でしろ、ボクは必要最低限のこと以外で、お前らに関わるつもりはない」
 言い切ると、そいつは顔を真っ赤にして別の生徒の所へ向った。ボクはまた、クツクツ笑った。
 なんとも馬鹿らしい、知恵のない頭だ。いじめると優越感でも得るのか、ほかの生徒まで配下に従えたと勘違いでもしているのだろう。
 良いことも悪いこともしていない、第三者でいること、それがこのクラスでのボクが一番望む立場だった。けれど、さっきの発言でボクもいじめの対象として無視されるかもしれない。けど、それでも別に構わない。どうせ、もうこのクラスにボクの友人はいない。
 ボクの友人は、別の第三者にいるんだから。

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如月立春

Author:如月立春
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